中小企業の事業承継が変わり始めています。創業家が所有と経営を分離して親族以外にバトンを渡す事例が増えています。帝国データバンクの調査によれば、2024年の同族承継は、32.2%とデータがある2017年と比べ9.4ポイント下がっています。この間に生え抜きによる内部昇格が5.3ポイント増え、2024年は36.4%と同族承継を初めて上回っています。
生え抜きによる承継は、実績次第で社長になる可能性が広がります。社員のモチベーションを高めることに繋がります。内部昇格に加えM&A型の承継も増えており、2024年は20%を超えています。手段の多様化を背景に、後継者のいない中小の比率は2023年に54.4%と、2018年比12.7ポイント下がっています。
少子化は加速こそすれ、改善の兆しはみえません。時代や会社の状況に応じて創業家と生え抜き、外部人材の誰もが社長になれる会社が望ましいと考えられます。柔軟な代替わりは成長への分かれ目です。大廃業の危機を大承継の時代へ転じることができれば、日本の経済は一段と強くなります。変化の土壌整いつつあります。多彩な会社継承が日本経済の土台を守り、イノベーションを生むことになります。
(2024年12月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)