日本は、2022年度で学部生の45%、私立大にかぎれば51%が人文・社会科学に集中する文系大国です。OECDのまとめによれば、学部入学者に占める理工系の割合は19%程度と、加盟国平均の27%を下回り、ほぼ最下位です。1960年代、第1次ベビーブームの影響で大学進学者が急増しました。設置費用が少なくて済む私大文系学部を受け皿にしたことが、今に続く人材育成の偏りを生んでいます。
日本は15歳時点の理数系学力は世界トップ級なのに、高度な数学Ⅲまで履修する生徒は普通科で3割どまりです。志願者の減少を恐れて、入試で数学の出題を避ける大学と、受験対応に傾く高校教育が若者の成長機会を狭めています。文部科学省は3,000億円の基金を設け、理系学部の新増設を促しています。
15~64歳の生産年齢人口は2040年に約6千万人と、2025年比で15%減ると推計されています。生産性向上には産業のあらゆる分野でDXが不可欠です。早い段階で文系と理系を分ける教育をやめないとデジタル社会の人材需要に対応できません。少子化が進む日本、個々の潜在力を解き放たなければ国力は保てません。今後の大学像や教育内容を巡る議論が進む中、20世紀型の教育を脱して国全体の知力を増やす道を探らなければなりません。
(2024年12月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)