政府が示した第7次エネルギー基本計画の原案は、脱炭素の実現を名目に、先細る原発関連産業の維持や存続にお墨付きを与える内容となっています。このまま電力会社など一部大企業の意見を重視し、原発の最大限活用に突き進めば、計画の原点とされる福島第一原発事故の反省や教訓が形骸化しかねない状況にあります。
日本原子力文化財団の最新アンケートによれば、段階的も含めて原発の廃止を求める意見は、規模の維持や拡大を求める声の2倍を上回っています。これに対し計画の改定を議論する経済産業省の審議会は、委員16人の大半が原発の積極活用を支持しています。懸念を示す民意が多い中、原発回帰策のさらなる推進が確定的となっています。
放射性廃棄物処分の問題はいまだ解決せず、古い原発の長期運転の常態化で、今後危険度が増す恐れがあります。炉の新設には長い時間と膨大な費用がかかり、ウラン燃料が枯渇するリスクもあります。
(2024年12月18日 東京新聞)
(吉村 やすのり)