受精卵で病気リスク予測

 PGT-P(polygenic)は、身長などの体質や、糖尿病や心臓病といった、様々な要因が発症にかかわる病気に将来かかる可能性を、胚のゲノムから予測するサービスで、着床前検査(PGT)と呼ばれる技術の一つです。糖尿病や心臓病など様々な病気のリスクを予測して胚に順位をつけ、望ましい胚を選択して妊娠を目指します。日本では認められていませんが、米国などでは実際に検査サービスを提供している新興企業があります。

 一つの遺伝子の違いだけでも発症する希少疾患などと異なり、多くの病気の発症や身長などの体質は、一つ一つは小さな影響しかなく、いくつもの遺伝子の違いの積み重ねの結果です。生活習慣などの環境要因が大きく影響する場合もあります。大阪大学などの研究チームが、6種類の主要なリスク予測の手法を使って、PGT-Pの結果の信頼性を検証しています。その結果の信頼性は低く、近い将来にも予測精度が改善する見込みは薄いとしています。

 結果が一貫しないのは、病気のリスク予測の手法そのものがまだ発展途上で、正確な予測に限界があります。また、同じ両親からつくられた胚はゲノムがよく似ているため、よく似たものの中から望ましいものを探すことになり、正確な予測のハードルがさらに高まります。信頼性の低い手法で胚を選ぶことで、残りの胚を捨ててしまうという倫理的な問題につながります。こういったサービスを社会全体として許容するのか、それとも規制するのか。信頼性に懸念があるということを踏まえて議論していかなければなりません。

(2024年11月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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