血液がんに対する移植医療

 血液がんは、悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫に大別されます。国立がん研究センターの推計によれば、2023年の新規患者数はこれら3種類で計6万400人に達しています。男性で5番目、女性では6番目に多いがんです。小児が罹るがんで最も多いのは白血病で、全体の約3割を占めています。

 治療は薬物療法が主となります。がんの種類や進行度などから、複数の抗がん剤を組み合わせて使ったり、特定のがん細胞に作用する分子標的薬を用いたりします。薬物療法で効果が得られない時、造血幹細胞移植が検討されます。自分の幹細胞を使う自家幹細胞移植と、血縁を含む他人から提供を受ける同種幹細胞移植があります。70、80歳代の実例も出ています。

 同種移植は、骨髄移植のほか、骨髄から血液中に流れ出た幹細胞を用いる末梢血幹細胞移植、へその緒の血液を使う臍帯血移植が中心となります。抗がん剤や全身放射線照射でがん細胞を減らした後に行います。

 白血球の型(HLA)が患者とドナーで完全に一致しなくても移植できるようになりましたが、ドナー探しから移植まで通常数か月かかります。急ぐ場合は、HLAの適合範囲が広く、ドナーとの調整が不要な臍帯血移植が選択肢となります。同種移植は治療効果が大きい反面、免疫反応による副作用が出ます。下痢や発疹などを伴う合併症の移植片対宿主病(GVHD)には、症状を抑える新しい薬や治療法が加わり、HLAが半分合えば可能なハプロ移植も増えています。

 患者自身の免疫を利用した二重特異性抗体薬やCAR-T療法も登場し、長期生存が難しい一部の悪性リンパ腫や多発性骨髄腫で効果が出ています。

(2024年12月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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