過去30年間で日本人の虫歯は大幅に減少しています。虫歯や治療した歯の数は、12歳の平均で0.55本と約9割減っています。世界の中でも虫歯が少ない国の一つとなっています。1989年に旧厚生労働省と日本歯科医師会が、80歳になっても自分の歯を20本以上保つを目標に掲げて始めた8020運動が貢献しています。
虫歯の減少は国民の生活の質を引き上げています。以前は歯を失う高齢者が多く、食べ物を思うように食べられなくなる人がいました。現在は80歳で20本以上の歯を持つ人の割合は50%超と、30年間で5倍に高まっています。
歯科医師の仕事も変化しています。かつては虫歯の治療や、入れ歯を作る業務が多かったのですが、現在は歯周病の治療や誤嚥性肺炎の予防が重要になっています。食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能を維持する診療が求められるようになっています。歯科医院に通えない高齢者が増え、患者が暮らす家や福祉施設へ歯科医が出向く訪問診療の需要が増えています。
(2024年12月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)