2024年の全国の企業倒産件数が、11年ぶりに1万件を超えました。原材料価格や人件費の上昇で経営が圧迫された中小・零細企業の市場からの退出が増えたのが主因です。倒産件数が1万件を超えるのは、東日本大震災の影響が残る2013年以来です。倒産の大半は中小・零細企業で、従業員数5人未満が7,582件と75.8%を占めています。
増加の主因は円安やエネルギー価格の上昇による物価高や、求人難などの人手不足です。物価高を理由とする倒産は前年比8.0%増の698件に上っています。従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産も1.8倍に増え289件と、集計が始まった2013年以来最も多くなっています。
一方で事業承継を目的としたM&Aは、集計を開始した2010年以降で最多となりました。経営者の高齢化が進むほど設備投資に消極的になり、成長が鈍化するといった悪循環に陥るケースも多くなります。事業承継などで若返りを進めることが課題になります。成長余力のある企業が事業承継を通じて廃業を回避できれば、経済の活性化につながります。
(2024年1月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)