臓器提供は、脳卒中や心肺停止、交通事故による頭部損傷などで入院し、脳全体の機能が失われた脳死の人から行われます。心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球が提供可能です。医療機関は、治療を尽くしたものの患者の脳機能が回復する見込みがない場合、脳死の可能性がある状態かを診断します。患者家族に治療の継続を望むかを尋ねるとともに、中止する場合に看取り方の選択肢に臓器提供があることを提示します。
家族は、患者の思いを推し量って話し合い、提供するかを決めます。患者が運転免許証などで提供の意思を示していれば、判断材料になります。家族の承諾の後、医師2人が2回の法的な脳死判定を行い、脳死と判定されると、臓器の摘出手術を実施します。各臓器は全国の病院で移植されます。
国内の脳死下の臓器提供は近年増えており、2023年は131件と初めて100件を超えました。
厚生労働省研究班の推計によれば、2023年度に国内で脳死の可能性がある患者のうち、家族に臓器提供の選択肢が提示されたのは4分の1にとどまっています。脳死下の臓器提供の手続きが可能な医療機関約900か所のうち、3分の2は携わった経験がありません。厚生労働省は、臓器提供の手続きの経験豊富な病院25か所を拠点と位置づけ、拠点が近くの病院に助言する事業を展開しています。
(2025年1月19日 読売新聞)
(吉村 やすのり)