病院の医療利益率の低下

 物価や人件費の上昇が医療機関の経営を直撃しています。福祉医療機構の公表によれば、2023年度は一般病院の半数が赤字となっています。診療などの医業の利益率も、統計を公表している2007年度以降で過去最低でした。病院団体は、経営は破綻寸前とし、厚生労働省に緊急的な財政支援などを要望しています。

 精神科病院などを除いた一般病院の医業利益率は、2019年度までプラスを維持してきていました。しかし、コロナ禍でマイナス1.1%にまで落ち込み、2023年度はさらにマイナス2.3%まで下がっています。コロナ禍では、医業利益率がマイナスでもコロナ対応の補助金があり、経常収支では7割ほどの病院が黒字でした。しかし、2023年度に補助金が打ち切られ、一気に経営が悪くなっています。

 医療機関に支払われる診療報酬は公定価格として価格が決まっており、医療機関の判断で物価などが上昇した分の経費を上乗せできません。2024年度の改定では、医療者の人件費などにまわる部分はプラス0.88%になりましたが、焼け石に水の状態です。

 個別の病院の経営努力では限界にきています。直近では病床利用率は上がっていますが、人件費や物価の高騰による経費の上昇に追いついていません。さらに、病院の電子カルテの更新には億単位の費用がかかり、政府が進める医療DXの導入の負担ものしかかります。人口減少などで医療の需要も減っています。

(2025年2月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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