在中邦人の減少

 中国に住む日本人が減っています。日本の外務省によれば、2024年は20年ぶりに10万人を下回りました。国・地域別の在留邦人数も米国、オーストラリアに次ぐ3位に後退しています。賃金上昇を背景に日本企業の拠点縮小が続き、政治リスクの高まりなどで、企業の駐在員が家族の帯同をためらう例が増えています。減少は12年連続で、最も多かった2012年から35%減っています。

 中国在住の日本人は、2000年代前半に急増しました。中国が2001年に世界貿易機関に加盟し、割安で豊富な労働力を武器に世界の工場として存在感を高める中、日本企業が次々と生産拠点を設けました。国・地域別の在留邦人数も、2003年にブラジルを抜いて米国に次ぐ2位になりました。

 その後、日本人がスパイ容疑で拘束されるケースが相次ぎ、2023年7月にはスパイ摘発を強化する改正反スパイ法が施行されるなど、日本企業の対中心理を冷え込ませました。最近では長引く景気停滞などを背景に治安が悪化しています。事業面で見た最大の理由は賃金の上昇です。

 中国は人口が既に減少に転じ、景気の低迷で消費も盛り上がりを欠いています。成長する巨大市場を狙って進出した日本企業にとっても、中国の魅力は薄れつつあります。中国駐在を希望する日本人が減り、中国語を学ぶ需要も落ち込んでいます。

(2025年2月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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