厚生労働省は、OECDのデータをもとに企業の利益に占める労働者の取り分である労働分配率を国別に平均値を算出しています。それによれば、日本は1996~2000年の平均は62.7%でした。OECD38カ国中4位で、米国、ドイツ、フランス、英国といった主要先進国より頭一つ抜け出していました。しかし、2016~2020年平均では57.2%まで低下しています。主要国の後塵を拝し、38カ国中11位に後退しました。
労働分配率は、賃金のほかに社会保険料なども含む雇用者報酬をGDPで割るなどして計算します。GDPの成長率に比べて人件費が伸び悩むと分配率は下がります。さらに、日本では大企業ほど低下が進んでいます。
大企業は、1996~2000年度の平均が62.8%で、2016~2020年度は53.8%に下がりました。中小企業はこの間、79.3%から76.3%で推移しており、大企業に比べて賃上げする余力が乏しいことが分かります。
バブル崩壊以降の失われた30年で、企業が人材投資を控え非正規雇用を拡大させる一方、内部留保を増やしてきました。また、金融市場からの圧力の高まりもあって株主配当は大幅に増加しています。人に投資しなくなったことで生産性は向上しなくなり、日本企業は競争力を失っています。技術革新に伴う労働者のスキルアップを、日本企業は長年怠ってきています。
(2025年2月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)