公益社団法人の3.11メモリアルネットワークの集計によれば、岩手、宮城、福島3県の伝承施設を訪れる人は、コロナ禍を除けば右肩上がりで増えてきています。2023年の来訪者数は37施設で計約156万人でした。震災から14年が経ち、人材や資金面で活動の継続に不安を感じる団体は少なくありません。
復興庁は、復興ツーリズムの意義を観光客の減災・防災意識を高め、交流人口の拡大や地域経済に貢献するとしています。岩手県や宮城県などは、ウェブサイトで震災遺構を巡るコースを紹介しています。旅行会社が伝承活動を担う複数の団体と連携し、参加者が求めるテーマに応じてツアーを組むこともあります。
観光で訪れる外国人に注目される場所もあります。青森県八戸市から福島県相馬市までの約1,000㎞を結ぶ自然歩道のみちのく潮風トレイルは、三陸海岸の震災遺構に加え、豊かな自然と景勝地が並んでいます。欧米などからの観光客の人気が高くなっています。行政が民間と連携して来訪者を誘導したり、互いにノウハウを共有したりする仕組みを整えることが必要となります。より多くの施設に内容に工夫が必要です。

(2025年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)