国内では近年、脳死下の臓器提供数がようやく増え始め、2023年には約130件になっています。しかし人口100万人あたりの脳死提供者は1.05人で、米国と比べ29分の1と依然として先進国で最低水準です。一方、2月末時点で約1万6,800人が移植を望んでいます。
臓器提供に関する意思表示は、運転免許証やマイナンバーカードなどで行えるほか、日本臓器移植ネットワークのウェブサイトでも登録できます。2021年の内閣府の世論調査によれば、国内で意思表示している人は10.2%で、意思表示をしない理由には、不安感や抵抗感などが挙がっています。しかし、実は提供したい、どちらかと言えば提供したいと考える人は4割に上っています。
厚生労働省の研究補助を受け、臓器提供に迷っていますカードが開発されています。迷っているという気持ちを素直に表すとともに、臓器提供についての情報を調べる、家族と話すなど、今後の行動についてチェックする欄を設けています。人が行動を変える場合、無関心の状態から、関心がある、意思を固める、意思表示するといったステージを進むという行動科学の考え方を取り入れています。
臓器を提供する意思表示が有効な年齢は、臓器移植法の運用指針で15歳以上と定められています。意思表示は何度でも変更が可能です。しかし、意思表示をしていないと、家族が本人の意思を推し量り、決断を迫られます。2010年施行の改正臓器移植法で、本人の意思が不明でも、家族の承諾のみで提供可能になっています。国内では臓器提供の8割が家族の承諾のみで実施されています。

(2025年3月8日 読売新聞)
(吉村 やすのり)