埋め込み型デバイスは、これまで人工心臓やペースメーカーで開発されてきました。心臓の機能低下や不整脈を伴う患者に広く利用されてきました。埋め込み型が医薬品よりも優れるのは、局所的に作用するため全身性の副作用を抑えられる点が挙げられます。薬では十分に効かなかった症状にも対応できる利点もあります。しかし、従来はバッテリー交換などメンテナンスが必要な点や、強い電磁波に弱い点がデメリットとして残っていました。

埋め込み型には手術が必要で、出血やあざ、感染症といったリスクがつきまといます。企業は埋め込むデバイスを小さくしたり、電池やデバイス自体の交換回数を少なくしたりしています。埋め込み型は、希少疾患やがんの領域でも研究が進んでいます。米バイオ医薬大手のバイオジェンは、骨の内部に治療薬を投入するデバイスを開発中です。治療の手立てが乏しい脊髄性筋萎縮症などの治療を目指しています。がんへのアプローチも始まっています。予後が悪い膵臓がんの治療にデバイスを役立てようとしています。

医療用の埋め込み型デバイスの市場は拡大を続けています。インドの調査会社360iリサーチによれば、2030年には世界で2024年比1.5倍の1,258億ドル(約18兆円)の規模に膨らむと予想されています。高齢化といった社会要因に加え、材料や通信といった技術革新も後押しするとみられます。

(2025年3月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)