米中協力論文の減少

 科学において米中は互いに最も重要なパートナーとなってきていました。米国の国際共著論文のうち約3割は中国と連携しています。中国においては約4割が米国です。第1次トランプ政権で、米中科学界の分断が進んだことを示すデータの一つが共同論文の減少です。米政府によれば、論文全体に占める米中の共同論文の割合は2022年に減少に転じています。

 米国の科学は、世界から優秀な若者を集めて発展してきました。2000年以降の米国のノーベル賞受賞者の約4割は移民です。中国は20年以上にわたり最多の人材供給国となってきています。理系博士号取得者の2割は、中国人留学生が占めています。第1次トランプ政権の対中締め付けはこのサイクルにも影響を及ぼしました。ネイチャーによれば、米大学の中国人留学生は2022~2023年に28万9,526人で、ピークだった2019~20年の37万2,532人から2割減っています。

 中国研究者の流出も増えています。プリンストン大学などによれば、米国から海外に移った中国人研究者は、2012~2021年に1万8,012人に上っています。2002~2011年の5,599人の約3倍です。2019年に初めて2,000人を超えました。中国は米国などに若い人材を送り込み、その後、海外研究者を自国に呼び戻す政策を打ち出し、研究力を高めています。国内で研究を発展させる体制を整え、論文の量や質で米国を上回るようになっています。

(2025年3月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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