宗教法人の解散命令に憶う

 宗教法人法では、宗教法人が法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした場合や、1年以上活動していない場合などに、裁判所が解散を命じることができるとしています。法令違反による解散命令が出たのは、過去に1995年のオウム真理教と2002年の明覚寺の2件です。命令が確定すれば、宗教法人は法人格を失うことになります。

 法人格を失うと税優遇が無くなります。宗教法人は、宗教活動による所得であれば法人税は払わなくて良く、宗教活動に使う土地や建物なら固定資産税などの税金もかかりません。また、法人名での銀行口座の開設や不動産の登記ができなくなります。一方、財産目録などの書類を所轄庁に提出するという宗教法人に課された義務もなくなり、監視が届きにくくなるという懸念も指摘されています。

 解散しても、法人格を失うだけで宗教団体としては存続でき、信仰や布教などの宗教活動を続けることは可能です。解散命令は法人格を与えるに適さないという判断であり、信教の自由は憲法で保障されています。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に関しては、被害を訴えている人がいます。解散命令が確定すると、裁判所が選んだ清算人が宗教法人の財産を管理することになります。被害者への損害賠償などの債務があれば、法人が保有してきた財産を処分し弁済にあてます。財産が余った場合は、その教団の規則によって処分されます。

 教団と政界の一部に持ちつ持たれつの関係があり、それが行政の対応を鈍らせた面があり、実態の解明と検証を続ける必要があります。文化庁は、教団に関わる非開示の情報について可能な範囲で公表すべきです。被害者の救済と新たな被害の防止は依然大きな課題です。信教の自由を守りつつ、宗教団体の違法行為は厳正に対応すべきです。

(2025年3月26日 日本経済新聞 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です