虐待を受けた子どもらが入る児童相談所の一時保護件数が増加しています。一時保護は、18歳未満の子どもについて虐待が疑われ、生命の安全を確保するため児童相談所が必要と判断した場合などに行われます。子どもに危険があると判断すれば、親の同意なしで保護することも可能です。保護された子どもは、児童相談所が運用する一時保護所のほか、児童相談所が委託する乳児院や児童養護施設、里親家庭などで過ごします。
全国で一時保護される子どもの数は増加傾向にあります。こども家庭庁によれば、非行なども含めた一時保護の件数は、2022年度は5万2,411件で、2012年度の1.6倍に増えています。児童虐待の深刻さが学校や病院に認識されて児童相談所への通告が増えたほか、相次ぐ重大事件を受けて児童相談所が子どもの安全確保をより優先するようになったことも背景にあります。
2018年に厚生労働省がまとめた指針は、対応が後手に回ると子どもの生命に危険が及ぶ可能性があるとして、一時保護をためらわないよう全国の児童相談所に周知しています。一時保護を解除した後に事件が起きたことから、児童相談所の対応が厳しく批判され、国は一時保護と保護者支援にあたる担当職員を分けるなどして速やかな安全確保を促しています。一時保護の期間も長くなり、全国平均の在所日数は2003年度に20.4日でしたが、2021年度には30日を超えています。
都市部を中心に定員を上回る一時保護所が目立つようになってきています。2023年度の平均入所率が100%を超えた一時保護所は、全国154施設のうち26施設ありました一時保護される子どもが増え、保護の解除後に行く先の確保も難しい傾向にあります。こども家庭庁は2025年度当初予算案に、一時保護した児童を預ける委託先を自治体が開拓するための事業を拡充する費用を盛り込んでいます。

(2025年4月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)