配偶者からの暴力事案の増加

 2001年に成立した配偶者暴力防止法は5回の法改正を重ね、被害者の一時保護や自立支援、加害者への保護命令などの対策が進んでいます。しかし、警察庁によれば、配偶者からの暴力などに関する相談は増え続け、2023年は過去最多の8万8,619件を記録しています。被害者を加害者が住む危険な自宅から安全な場所へ迅速に避難させ、新生活を支える取り組みは十分とは言えません。

 配偶者からの暴力(DV)に苦しむ女性らの夜逃げを請け負う専門業者がいます。自宅を抜け出す機会を探り、車を手配して被害者と家財道具を安全に運び出します。貧困への不安や加害者の束縛、子どもの養育など、様々な事情で一歩を踏み出せず、苦しむ被害者は多くなっています。

 夜逃げを手助けする業者は、いわゆる便利屋業も含めると国内に数多く存在します。しかし、契約の見積書も示さず、後になって高額な料金を請求したり、弱みにつけ込んで金を貸し付けて高金利で返済を求めたりする業者もあります。業者に依頼する際は料金や手順などを十分に話し合って、納得してから頼むべきです。日本には、DV被害者をワンストップで支援する仕組みがありません。夜逃げ屋は公的支援が不足した部分を補っています。国や自治体は信用できる民間団体との連携を深め、支援の質向上や迅速化に努める必要があります。

(2025年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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