京都大学の研究チームは、iPS細胞からつくった神経細胞をパーキンソン病の患者の脳に移植し、治療の安全性や効果を調べる治験の結果を公表しています。細胞を移植した患者7人に健康上の大きな悪影響は無く、安全性が確認され、4人は症状が改善したとしています。治験の結果は科学誌Natureに掲載されました。
パーキンソン病は、ドパミンという物質をつくる脳内の神経細胞が減り、手足が震えたり体が動きにくくなったりする神経の病気です。厚生労働省の統計によると、国内の患者数は約25万人と推計されています。脳にドパミンを補充する薬物療法で症状を抑えますが、しばらくすると薬が効きにくくなり、症状が進行します。
研究チームは、他人のドパミンをつくる神経のもととなる細胞に変化させ、計500万~1千万個を患者の脳の両側に移植しました。移植した細胞が定着し、ドパミンをつくり出すかなどを調べました。対象は、薬の効きが悪くなり、症状のコントロールが難しくなってきた50~60代の患者7人で、最初の1人は治療の安全性、他の6人は効果についても検証しました。移植した細胞ががん化するなどの重大な有害事象はみられず、移植した細胞が脳内にとどまり、ドパミンをつくり出すことが確認されました。6人中4人で症状が改善しています。
(2025年4月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)