東京都心で内装や機能性にこだわったコンパクトオフィスビルが増えています。都心15区で2022~2024年に新規供給された中小型ビルのオフィス面積は、2019~2021年に比べて5割増えています。将来有望なスタートアップを囲い込むほか、資材高や人手不足で大規模ビルの工期が見通しづらくなる中、短期間で集客して投資コストを回収できる新たな収益源としています。

土地取得から完成まで10年以上かかることもある大型ビルに比べて、コンパクトオフィスビルは投資コスト回収までの期間が短くなっています。築40年以上の老朽化したビルを取得して約2年で新築ビルに建て直し、テナントを埋めてから数年以内に自社グループの不動産投資信託や投資家などに売却します。人手不足や資材高で大型ビルの工期が見通しづらくなる中、不動産会社としても事業リスクを分散しやすくなります。

スタートアップならではの働き方も需要を押し上げています。日本生産性本部が2025年1月に実施した調査によれば、テレワーク実施率は従業員100人以下の企業が9.7%と、1,001人以上の大企業の25.6%に比べて大幅に低くなっています。対面での交流を重視する経営者が多く、オフィス環境への積極的な投資につながっています。

(2025年4月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)