無痛分娩の割合の国際比較

 海外では無痛分娩が主流となっている国が多くなっています。2019年の日本産科麻酔学会のまとめによれば、全分娩数に占める無痛分娩の割合はフランスで8割、米国で7割、韓国で4割にのぼっています。日本は増加傾向にあるとはいえ、日本産婦人科医会の調査によれば、2023年時点で13.8%にとどまっています。

 日本で無痛分娩が広がらない背景には、医療提供体制や保険適用をめぐる違いがあるとされています。海外では大規模な医療機関に分娩を集約しており、麻酔科医を確保しやすいほか、保険適用によって妊婦の経済的負担が抑えられています。日本では、出産は公的医療保険の対象外です。国の検討会で、現在保険適用するかどうかの議論が始まっており、その場合は無痛分娩を含めるかも検討されるとみられています。

 出産の痛みに対する価値観の違いもあります。日本ではお腹を痛めて産んだ子という言葉に象徴されるように、出産時の痛みは特別なものとされ、その痛みや苦しみも当然なものと受け止められてきました。出産時の痛みに耐えられることが、女性の身体や母親の証とされ、そのための踏み絵にされてきました。

 無痛分娩であっても分娩時の痛みが軽減されるだけで、女性が十月十日で経験する身体の変化は自然分娩と同じです。産みの苦しみが重視されてきた風潮に一石を投じています。分娩に対する正しい理解が広まることが大切です。

(2025年4月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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