東京都は、出産後の母親を対象とした産婦健診について、都内の区市町村で共通の受診制度を導入します。受診券の様式や公費負担の共通ルールを都が示し、医療機関への委託契約の仲介なども担います。新制度は2026年度にもスタートし、対応が遅れていた自治体への普及を後押しします。
産婦健診は、出産した病院などで産後2週間~1カ月に受診します。母体の回復状況や精神状態を調べ、産後うつや乳幼児への虐待の予兆を把握するのに効果的とされています。区市町村が病院に委託し、公費で実施する場合は国や都が費用を一部補助します。各病院の料金によって異なりますが、自己負担はゼロとなるケースが多くなっています。
都内では妊婦が居住していない自治体の病院で出産するケースが半数に上ります。そのため区市町村の住民向けに産婦健診を実施しようとすると、地域外も含めた多くの病院との契約が必要になります。病院との委託契約業務の負担も実施のハードルになっています。都が導入を目指している共通の制度が実現すれば、都内であれば基本的にどの病院で出産し、産婦健診を受けても公費補助が適用されることになります。しかし、里帰り出産などで他の道府県で産婦健診を受ける場合は、ほとんどの場合で引き続き自己負担が必要となります。

(2025年4月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)