がん治療薬の高額化

 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の調査によれば、根治が難しく薬での治療が主となるステージ4の患者では、薬の費用が従来の治療薬と比べ10~50倍にもなっています。近年、分子標的薬や免疫療法といった高額な新薬が増えてきたことが背景にあり、こうした新薬は公的医療保険の財政状況に影響を与えています。

 月50万円以上の治療を受ける人の割合は、がん17種の中央値で59%です。また、17%の患者は月額100万円以上の治療を受けています。公的医療保険の適用後は、患者の自己負担は原則1~3割となり、さらに所得に応じて月ごとの負担に制限が設けられる高額療養費制度もあります。

 がん治療では、近年従来の抗がん剤のほか、がん細胞の特定の分子をターゲットにした分子標的薬や、免疫の機能に働きかける免疫チェックポイント阻害剤など、画期的な薬が登場しています。これらの新薬は開発コストなどによって高額になっています。

 転移して根治が難しい大腸がんの患者1,880人の分析では、従来型の抗がん剤のみの治療だと月1万7千~5万1千円でしたが、分子標的薬を含む治療では、月8万5千~84万3千円となります。新薬の最も高い治療と、従来型の安い治療を比べると約50倍です。患者の16%が月50万円以上の治療を受けています。胃がんでは、新薬の治療は最大77万円で、従来治療に比べると20倍以上で、肺がんは130万円を超えるものもあり、約20~55倍でした。

(2025年4月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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