社外取締役が投資家と対話する機会を設ける企業が増えています。NECなど主要企業の実施率は3年で倍増し、全体の半数近くを占めるまでになっています。企業統治を重視する流れを受けて、経営の規律維持など社外取締役の役割は大切になってきています。対話機会の拡大は、社外取締役制度が普及から実効性を高める新たな段階に入ったことを示しています。
三井住友信託銀行の調査によれば、社外取締役と投資家が対話する機会を設けた主要企業(時価総額5,000億円以上)の割合が、2024年は48%に達しています。3年前の2倍の水準で、今後も増加が見込まれます。全体でも調査開始の2020年時点には5%でしたが、2024年には16%へと上昇傾向にあります。
社外取締役は、他社の経営経験や様々な分野の専門性を生かして助言することや、社内の利害関係に縛られず株主の立場で経営を監督することが期待されています。近年は、女性や外国人など社外取締役人材の多様性確保などにも投資家の関心が広がっています。社外取締役ののべ人数も5年前に比べて3割増えています。これまで社外取締役は大局的なご意見番といったイメージも強かったのですが、後継者計画や成長戦略、リスク管理など経営陣の一角として主体的な役割を果たすことが、急速に期待されるようになってきています。
議決権行使を巡り、10年以上など長期在任の社外取締役の再任に反対する事例も目立っています。経営者との距離が近くなり過ぎると社外取締役としての役割を果たしにくくなるとの懸念が背景にあります。アクティビストの台頭もあり、今後も基準を厳しくする流れは続きます。
(2025年5月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)