出生率1.8の波紋

 

 安倍政権が人口減対策の考え方をまとめた文書に、出生率1.8を目指すべき水準と記したことが波紋を呼んでいます。この1.8という数字が出たことにより、国の「出産の押しつけだ」とする声が出ています。結婚や出産に関する数値目標が出ると、必ず結婚・妊娠・出産は個人とカップルが自由に決定すべき問題であり、国や政府が口出しをすべき問題ではないという意見がでます。わが国は未曽有の超少子・高齢化社会に直面し、女性の社会的なサポート体制を構策するよりも前に、妊娠・出産を女性に押し付けるのではないかと警戒感をあらわにすることが多いようです。昨年の内閣府が提案した女性の健康手帳の時も同様でした。

 

 この1.8という数字に根拠があるわけではなく、人口が増加も減少もしない人口置換水準は合計特殊出生率2.08です。現在、わが国の夫婦が希望する子どもの数が2であることを考慮して、当面は1.8程度を目指すとするとしたに過ぎません。少子高齢化による消滅の可能性のある地方自治体では、出生率や出生数の数値目標を掲げていることころもあります。少子化の原因は若い男女の雇用が安定せず、子どもを産めるだけの経済的基盤がないことにあります。産みたいという希望と産めない現実のギャップを政策で具体的に解決してゆくかが鍵となります。

(吉村 やすのり)

 

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