株主提案とは、年に1回開かれる定時株主総会の場で、会社が出す議案以外の提案を株主が出せるものです。6カ月以前から継続して1%以上の議決権を持っていれば、法人でも個人でも提案できます。総会の開催日よりも8週間以上前に出しておく必要があります。これまでは会社の株主還元に不満な株主が増配や自社株買いを求めることが多かったのですが、近年は取締役選任や親子上場の解消などを求めるといったガバナンス関連の議案が増えてきています。
株主提案をする多くは、アクティビストと呼ばれるファンドです。アクティビストに投資するとリターンが大きいため、年金や大学など世界中の投資家が賃金を提供し始めています。日本国内で活動するアクティビストの数はこの10年間で7倍以上になり、今では70を超えています。
特に日本はアクティビスト天国と呼ばれています。東京証券取引所がPBR(株価純資産倍率)1倍以上を上場企業に求めたことで、資本効率が低い企業を批判することが多いアクティビストには強い追い風が吹いています。株の持ち合い解消が進み、安定株主が減っていることも一因です。アクティビストは水面下で企業に様々な要求をし、交渉をしています。株主提案に至るのは、最後までお互いが妥協点を見いだせなかった場合です。
世界で最も株主提案の数が多いのは米国です。しかし米国では、株主提案には法的拘束力がなく勧告的決議にとどまります。企業側は株主提案が可決されても従う義務はありません。提案内容にも制限があり、通常の業務執行の範囲や配当については提案できません。日本では増配も要求でき、可決されたら法的拘束力があるため、企業は従わなければなりません。
(2025年6月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)