国民医療費が増え続ける一方、病院は7割以上が赤字に沈んでいます。診療科や地域間での医師の偏在も目立ちます。政府は、骨太の方針にインフレや賃金上昇を社会保障に反映させる方針を盛り込みました。経営が苦しいという医療機関の声に応えた形ですが、均整がとれ持続可能な医療を求めるなら、抜本策が必要となります。
処方箋としては、①中小が多く乱立ぎみの病院を減らす、②地域ごとに医療機関の役割分担を進める、③各機関が得意分野を磨く、④デジタルを生かすなどが考えられます。
命を扱う医療の重みを知ったうえ、新たな発想やテクノロジーの活用をためらわない経営する医師が必要となります。院長に集中する医療と経営の権限を切り離し、経営面を強化する医経分離の考え方の導入も大切です。事務側は経営を学ぶ意欲が増し、医療側は質の向上に専念できます。
日本総合研究所が公表した意識調査によれば、政府は非効率な医療を見直し、価値のある医療に投資すべきだとしり人が8割を超えています。国民も現状のままで良いとは思っていません。日本の失われた30年は医療に影を落としましたが、変革の試みも途絶えてはいません。

(2025年6月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)