国政選挙におけるジェンダーバイアス

 女性議員の割合は、衆院が15.7%に対し、参院は約10ポイント高い25.5%です。衆院選より選挙区が広い参院選では、地元の利益代表のネットワークよりも幅広い支持が必要となり、著名人や多様性の象徴とみられやすい人物が公認されることが多く、結果的に女性が多くなります。

 衆院議員は任期4年で任期途中でも解散があるのに対し、参院議員は任期6年で解散がありません。また、衆院には憲法上、予算案可決などについて参院よりも強い権限を付与した衆議院の優越があります。

 慶應義塾大学などの政治学者の研究チームが、衆・参の制度の違いに着目して分析したところ、ジェンダーバイアスが投票行動を左右する側面があることが明らかになっています。女性は、権限の小さい参院議員の方が衆院議員よりもふさわしいとの偏見が、有権者の間に潜んでいる実態があると考えられます。衆・参の権限や任期の違いは、一見するとジェンダー中立的に思えますが、選挙をめぐる人々の意思決定に影響を与えています。

 一方、女性が議員職の安定性を重視する傾向も浮き彫りになっています。多くの女性は、社会環境の要因もあり、いつ失職するか分からないリスクの方が気になっているようです。落選しても元の勤務先に戻れるようにするなど、立候補をためらわせないような仕組みづくりが必要となります。女性は任期が安定する参院議員の職を好む一方、男性は権限の大きい衆院議員への意欲が相対的に高くなりやすくなっています。

(2025年7月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です