親などの介護を理由に仕事を辞める介護離職が増えています。総務省が5年に1度行う調査によると、2022年9月までの1年間に介護離職した人は10万6,000人で、前回2017年の調査より7,000人増えています。育児・介護休業法に基づき、勤め先で両立支援制度を使えますが、介護休業(通算93日)の取得者は、親を介護する会社員らのうち1.6%、介護休暇(年5日)は4.5%にすぎません。
介護をしながら働く人は2022年時点で364万6,000人です。職場の中核を担う50歳代が最多の42%を占めています。離職に伴う人手不足などで生じる経済的損失は、2030年時点で年9兆円を超えると国は試算しています。超高齢社会で親の介護に直面する社員は増えていくばかりです。
親の介護は子ども自身が担うものと思って、仕事を辞める道しか見えなくなる人もいます。経営者側も介護の知識や経験が乏しく、支援制度などの情報提供ができていません。社員の介護の悩みは、経営にかかわる問題ととらえ、仕事を続ける方法を一緒に考える姿勢が企業に求められます。国は、社員に早めの相談を促すといった企業の対策を推進すべきです。

(2025年7月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)