日本人の20代女性の2割前後が低体重(BMI18.5未満)で、先進国の中でも、特に多くなっています。低体重や低栄養は、骨量の低下、月経周期異常など、女性の健康にかかわる様々な問題と関連しています。日本肥満学会は、こうした病態を新たな疾患と位置づけ、女性の低体重/低栄養症候群(FUS)と名付けています。
筋肉量や身体活動が低下し、糖尿病の発症リスクとしても知られており、摂食障害や貧血などにもつながります。不妊や生まれてくる赤ちゃんの低体重などとの関連もあります。低体重で生まれてきた赤ちゃんは、その後の生活習慣病などのリスクが高くなるとの報告があり、次世代にまたがる健康問題として認識され始めています。
背景には、痩せ=美とみる社会の風潮もあります。肥満症や2型糖尿病の患者のためのGLP-1受容体作動薬などの新薬が、やせ薬としてSNSなどで話題を呼んでいます。副作用や過度なダイエットの広がりが懸念される中、自由診療として対象外の人にも使われています。 FUSを防ぐためにも、3食をしっかりとること、1日8千歩歩くなど身体活動を高めること、7時間程度の睡眠時間を確保することなどが大切です。日本では痩せたねと言う言葉が褒め言葉として使われていることがあります。痩せに偏りすぎる社会の価値観を変えていくことも大切です。日本肥満学会は、女性の低体重・低栄養が原因となる健康障害を新たな疾患として位置づけています。将来的には、健康診断などでリスクのある人を見つけ、適切な対応を促していくことが求められます。

(2025年7月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)