今後の医療保険制度を考える―Ⅱ

医療保険制度の見直し

 来年度予算編成の指針となる骨太の方針に、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しを検討すると明記されています。OTC類似薬とは、医師の処方が必要な薬のうち、市販薬と成分や効果が似ているもので、保険料引き下げのため、薬によっては保険適用除外を考えるべきです。

 保険から払う分を減らすには、自己負担を増やすという方法もあります。現在、75歳以上の自己負担は原則1割、一定所得以上は2割、現役並みの収入を得ている人は3割となっています。3割負担の対象者を、今後拡大することも視野に入れるべきです。全世代型社会保障の考え方に立てば、年齢より負担能力が優先されるのは自然な流れです。高額療養費の見直しも考慮すべきです。

 医療機関は公定価格に縛られ価格転嫁ができない中、他分野と働き手を取り合わなければなりません。物価や賃金の上昇を背景に、骨太の方針には、医療や介護の人材確保に向けて保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引き上げを始めとする処遇改善を進めることも必要です。

 人口が減る中、医療に関わる費用と人材の効率的な活用を考えることは、医療提供体制のあり方を見直すことともつながります。新たな地域医療構想に向けた病床削減の検討も必要になります。いずれにしても、医療制度の改革は国民に負担を強いることになります。

(2025年8月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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