過剰な介護サービスの実態

 介護保険の仕組み上、住宅型施設の事業者が自らサービスを提供するより、外からサービスを受ける方が出来高払いで多くの介護報酬を得られます。比較的安く入居させ、併設・隣接する関連法人の事業所が上限近くまでサービスを提供し、利益を上げる事業モデルが成立しています。

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、2011年に制度化されました。自治体の整備目標の対象外で、2014年時点の約5,000施設から2024年には約8,300と1.7倍になっています。有料老人ホームは約1万7千で1.8倍に増えました。厚生労働省によれば、サ高住や住宅型有料老人ホームの8割に併設または隣接の介護事業所があります。その8~9割は住宅事業者の関連法人です。

 わが国では社会全体で介護を支えるという理念の下に、介護保険財政は利用者の負担が1割で残りを公費と保険料で賄っています。介護分野では報酬の上積みを狙う事業者が、シニア向け住宅の入居者に過剰なサービスを提供する事例がなくなりません。利用を増やしても、サービスを受ける人の負担感は高まりにくいため、供給が需要を生み給付を膨らませている構造があります。

(2025年8月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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