身寄りのない高齢者らがもしもに備えて、緊急連絡先や遺言書の保管場所などを自治体に登録する終活情報登録制度の導入が広がり始めています。厚生労働省の調査によれば、昨年末までに東京都豊島区や愛知県大府市など15の自治体が導入しています。今年度も横浜市や神戸市などが導入予定です。
背景には独り暮らし高齢者の増加があります。2025年版高齢社会白書によれば、65歳以上の単身世帯は2005年の386万世帯から2020年に671万世帯に増加しています。2050年には1,083万世帯に達する見通しです。孤立死も目立つようになっています。警察庁によれば、2024年は65歳以上の高齢者5万8,044人が自宅で一人で亡くなっています。
終活はこれまで本人と家族で備えるものでしたが、孤立死や引き取り手のない遺骨が増え、行政が対応するケースが増えています。国は自治体が導入しやすいよう制度づくりのガイドラインなどを作成し、制度の有効性を広く示すべきです。
(2025年8月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)