理系人材育成の遅れ

 日本の理系人材の育成が遅れています。OECDの公表した報告書によれば、わが国の2023年の博士課程修了者のうち、STEM(科学・技術・工学・数学)分野を専攻した割合は加盟国の平均を下回り、38カ国中で32位でした。博士のうちSTEM専攻の割合は日本は35%で、加盟国平均の43%を下回っています。最も高かったのはフランスとルクセンブルクで、いずれも67%でした。

 学士課程でみても、卒業生のうちSTEM専攻は日本は20%で、平均の23%を下回っています。修士課程では平均より高い42%で、大学の入学時に理系を選ぶ人の少なさと、博士に進まずに修士で終える学生が多いと思われます。日本の博士のうち、最も多い専攻分野は医療・福祉分野の41%で、加盟国平均の18%を大きく上回っています。

 理系の博士号取得者が少ない背景には、学部学生の約8割が在籍する私立大学を中心に、学部の構成が文系に偏っていることが関与しています。理系は研究設備に多額の費用がかかることなどから、文系学部を設置する大学が多くなっています。学生確保の観点からも、授業料や受験の難易度の上昇を招きかねない理系への転換はハードルが高くなっています。

 文部科学省は、将来を見据え理系への私学助成金を手厚くするなどし、学部再編を促してきています。理系分野を拡充する場合の資金を支援するため、3,000億円の基金を設置し、これまで3回の公募でのべ約250校を選定しています。大学側には文理融合型の学部を設置する動きが広がっています。

(2025年9月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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