先進国の出生率の再低下

 日本の少子化対策のお手本とされた北欧やフランスといった先進国の出生率が再低下しています。2024年にスウェーデンの合計特殊出生率は1.43、フィンランドは1.25と過去最低の水準となっています。2021年に1.58まで上昇したドイツは1.35に下がっています。2010年代前半まで2程度を保っていたフランスは1.62となっています。

 新型コロナウイルス禍による一時的な現象との見方もあったものの、その後も出生減に歯止めがかかっていません。米国も2024年は1.6程度となっています。仕事と家庭の両立への懸念が目立った過去の低下局面と異なり、勉学の長期化や結婚・出産に対する価値観の変化、不安定な国際情勢などが絡み、若年層の出生減が加速しています。

 先進国の出生率の再低下は、1990年代から2000年代頃にも進みました。女性の家事・育児負担が今よりも大きく、主に女性側がキャリアか家庭かの二択を迫られたことが要因の一つとされました。各国政府は男女ともに育児休業を取りやすい制度や休業中の所得補償、保育サービスの充実といった政策を打ち出し、2000年から2010年代頃は出生率が回復していました。

 日本は初産の平均年齢が2024年に31.0歳と、2005年の29.1歳から上昇しました。初産に限らず高年齢になって出産する人が増えており、2024年は40代前半女性による出産数が20代前半を上回っています。フランスも初産の平均年齢が上昇しています。2024年は31.1歳と、20年前の29.5歳から上昇しています。初産の年齢が上がると、希望する子どもの数に達する前に出産可能年齢を超える可能性が高まります。

 OECDによれば、生涯子どもを持たない人の割合も世界で伸びています。日本は1975年生まれの人で28.3%と、1955年生まれの人より15ポイント以上高くなっています。ドイツやフランスなどでも上昇しています。20年先の不確実性が高まる中で、出産に慎重になっています。結婚・出産は必ずするものではなく、キャリアなどと並ぶ選択肢の一つになっています。

(2025年9月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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