2018年に複数大学で女性への入試差別が発覚して以降、文部科学省は男女別の入試結果を公表して差別の解消を図ってきました。医学部医学科で在校生の女性比率が半数超となる大学が複数出始めており、2025年度の聖マリアンナ医科大学は57%で、東邦大学医学部が52%でした。しかし、夜間・緊急対応が少ない診療科に女性が偏在する問題はなお残り、人手不足に苦しむ診療科も目立っています。
若い世代を中心に女性医師の数も増えています。厚生労働省の2022年調査では全体の女性比率が23%で、29歳以下は36%です。しかし、診療科ごとに差があります。最高は統計開始以降初めて半数を超えた皮膚科の50.9%で、乳腺外科が46%と婦人科が43%で続いています。一方、緊急対応が多い消化器外科の8%や外科の7%などは1割未満で、気管食道外科が最少の3%です。女性医師が増えているにも関わらず、女性の希望者が少ない診療科では、今後のなり手不足につながる死活問題となります。
厚生労働省が医学生に実施した調査によれば、診療科を選択するうえで、労働条件が関係すると答えた割合は92%にのぼっています。若い男性も働き方を重視しています。診療科ごとの女性比率の差を無くすには、複数の医師で患者を診るチーム制の導入や労働環境の改善が必要です。ここ10年で若者の価値観は大きく変わっています。給与や働きやすさを重視して進路を決める流れは不可逆的です。

(2025年9月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)