厚生労働省は、生活保護受給者の過剰受診を防ぐため、マイナンバーカードの活用を進めます。生活保護の実務を担う自治体の福祉事務所が受給者の受診状況を早期に把握できるようにします。必要以上に通院している場合は本人を指導します。医療機関にシステム改修の費用を補助することにしています。社会保険診療報酬支払基金を通じ、病院に28万3,000円、診療所は5万4,000円を上限に補助します。
生活保護制度には、医療券を提示すれば福祉事務所が委託する病院などで全額公費で受診できる医療扶助があります。2023年度の生活保護事業費は、約3兆6,000億円で、このうち約1兆8,000億円が医療扶助です。自己負担が不要のため、過剰受診が起きやすくなっています。2023年に同じ医療機関を月15回以上受診した過剰受診の疑いあり、福祉事務所が指導した受給者は1,800人にも及んでいます。
新システムでは、生活保護申請時に福祉事務所が把握した受給者のマイナカード情報や受給者番号などを支払基金に登録します。医療機関で受給者のマイナカードを読み取ると、支払基金を通して福祉事務所に受診情報が共有されます。福祉事務所はこれまで、医療機関が発行するレセプトを支払基金を通して受け取り、受信状況を把握しており、指導までに約2カ月かかっていました。受診頻度を逐一把握できるようにすることで、指導対象者の迅速な洗い出しにつなげます。

(2025年9月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)