GゼロとPゼロ

 Gゼロとは、グローバルな課題への対応を主導する意思と能力を持ち、国際秩序を保つ国家やその集まり(Group)を欠く状態を言います。世界は確かにGゼロの様相を呈しています。超大国・米国は、トランプ大統領の下で内向き志向を強め、民主主義や法の支配、自由貿易の守護者としての責任を放棄しつつあります。政治・経済の基盤が脆弱な欧州や日本に、国際統治の空白を埋めるほどのパワーはありません。

 2024年10月の衆院選と2025年7月の参院選で敗れた自民党が、政策決定を主導できる政党ではなくなり、不安定な政治的後退期に入りました。わが国は長く政権を担ってきた政党(party)が弱体化するばかりか、これに取って代わりそうな政党も現れず、指導力の欠如に苦しんでいます。GゼロならぬPゼロと呼ぶべき状況にあります。

 海外の世論調査を見る限り、日本の主要政党に対する国民の不満は予想以上に強いと思われます。米調査会社のピュー・リサーチ・センターによれば、最大与党と最大野党がともに好ましくないと答えたダブル・ネガティブの成人は54%にものぼっています。調査対象24カ国の中では、ギリシャの61%に次ぐ2番目の高水準です。

 多様化する民意を、一つの政党が広くすくい取るのは困難になってきています。複数の政党が連立を組めば、自分の声が政治に届かないという有権者の不満を和らげる結果にもなり得るのではないでしょうか。混沌とした現在のわが国において、いずれにしても連立のための協議は試練でもあり、チャンスでもあると言えます。

(2025年10月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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