皮膚から卵子の作製

 米国のオレゴン健康科学大学の研究チームは、卵子のもとになるヒトの卵母細胞の核を皮膚の細胞核と入れ替え、受精卵の約9%ですが、胚盤胞まで発達させることに成功しています。これまで皮膚や血液の細胞からiPS細胞をつくり、生殖細胞に変化させる研究が世界的に進められています。

 この研究では、iPS細胞を使わず体細胞の機能を別の細胞に変化させる技術を用いて卵子をつくる研究に取り組んでいます。ヒトの卵母細胞から染色体が含まれている核を取り出し、皮膚の細胞核を移植します。受精時1組の染色体を廃棄させるmitomeiosis(有糸減数分裂)を誘導することにより、移植された核の中にある2セットの染色体を分けて、減数分裂を模した状況をつくり出すことに成功しました。こうした操作をした卵母細胞82個のうち1割未満が、受精後6日目までの胚盤胞まで発達しました。

 しかし、生殖細胞ができる過程に起こる染色体の組み換えは起こらず、分離もばらばらで、減数分裂の過程を再現することは困難でした。臨床応用にあたってはさらなる研究が必要です。iPS細胞から生殖細胞をつくる研究は、染色体の組み換えなどを含め、生体内で生殖細胞ができる過程に沿って進められています。

(2025年10月28日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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