世界各国で洋上風力発電所の開発計画が縮小する中、中国の存在感が高まっています。中国企業の風車の価格は欧米企業に比べて割安な上、中国政府が企業に再生可能エネルギー調達を義務付けたことが後押ししています。2030年までの新規導入容量は世界全体の54%に達する見通しです。風車の輸出にも力を入れ、太陽光に続いて世界市場を席巻しつつあります。
米調査会社のブルームバーグNEFの予測によれば、中国が計72GWと、全体の54%を占めています。2位の英国の15GWに5倍近くの差をつけ、他国を圧倒しています。世界風力会議の集計によれば、洋上風力の累積導入量は中国がシェア50%で、英国が19%、ドイツが11%で続いています。米国やドイツはインフレや利上げの影響、事業の撤退や入札の不調で2030年まではシェアの低下が見込まれています。
市場の成長にあわせて風車メーカーも増産や大型化を進め、コスト削減もしています。風車は1基あたりの規模を大きくし、発電所に設置する台数を減らしています。建設費や保守費用も抑えています。5年間で中国製の風車価格は6割下落しています。発電コストも低下傾向が続いています。
中国勢は、ついに技術面でも先行を許していた欧米メーカーを追い抜き始めています。中国メーカーが研究開発に巨費を投資し続けられる背景には、中国の洋上風力市場が堅調に推移していることにあります。中国メーカーは世界シェアで上位4社を独占しています。競合の少ない海外市場にも目を向けています。

(2025年10月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





