医療被曝の抑制

 日本の発がんの3.2%は、CTなどの放射線診断による被曝が原因と推定されています。放射線を使う画像診断は、病気や怪我の発見・治療に役立つメリットと、発がんの可能性を僅かに高めるリスクがあります。一人一人の発がんリスクは極めて低く、医師が必要と判断して行う検査はメリットの方が上回っています。日本のようにCTが高度に普及し、検査の恩恵を受ける人が多くなると、結果的に高い数字となります。

 線量が高い方が画質が良くなる傾向があります。必要な画質は診断目的ごとに違います。線量の抑制を図る態勢が根付いていないと、不要に精細な画像を高い線量で撮りがちになります。日本では、医療被ばく研究情報ネットワークが2015年に初めて線量抑制の目安である診断参考レベル(DRL)を設定し、5年ごとに改定してきています。医療被曝の大半を占めるCTの線量も顕著に低下しています。

 CT検査の場合、全体の約4分の1の施設がDRLより高い線量を常用しています。線量は適切かと点検を促し、過剰な被曝を減らすのが、DRLの意義となっています。2020年に医療法の施行規則が改正され、医療被曝の管理が制度として義務化されたことで、対策が加速しています。

(2025年11月1日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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