厚生労働省の発表によれば、国公立や民間を含めた一般病院の約6割が2024年度に赤字でした。医業と介護の収益に対する利益の割合を示す利益率は、2024年度は平均でマイナス7.3%でした。利益率は少なくとも2019年以降で最低レベルでした。主要な収入源の診療報酬が、物価高騰や賃上げに対して低いことが背景にあります。公表した医療経済実態調査では、民間と国公立を合わせた病院の経常利益は平均で3.9%の赤字でした。2023年度から1.5ポイント悪化しています。
一方の診療所の経常利益率は、入院用のベッドがない無床診療所も含めた医療法人経営が4.8%の黒字でした。前年度比ではそれぞれ3.5ポイント、3.2ポイント悪化していますが、病院と比べると経営は堅調だと言えます。
一般病院が主に診療報酬から得る医業収益は、2023年度から2024年度にかけて2.5%増えています。しかし支出も同程度の2.3%増えています。診療材料費や消耗器具などの費用は4.9%、業務の委託費は3.8%と、収益の伸びを上回って増えた費用も多く、経営難から抜け出しにくい状況が続いています。
診療報酬は、診察や手術、検査といった公的医療保険の医療サービスに対して国が設定した価格で、2年に1度見直されます。診療報酬の引き上げは医療機関の収入増につながりますが、患者の窓口での負担増にもなります。医療費は高齢化や技術の進展でさらなる膨張が予想されます。サービスの提供体制や財政の持続可能性を高める観点での診療報酬の見直しが欠かせません。

(2025年11月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





