全国で病院経営が悪化しています。厚生労働省の調査によれば、2024年度決算で赤字となった民間病院は全国で49.4%で、前年度に比べ7.9ポイント増えています。帝国データバンクによれば、2024年の医療機関の倒産は64件、休廃業・解散は722件で、ともに過去最多を更新し、2025年も上半期で倒産35件と過去最多のペースで推移しています。背景には、医療機関の収入の柱である診療報酬は、物価や賃金の上昇に合わせて独自に引き上げられない事情があります。
病床利用率が年々低下していることも、病院経営を圧迫しています。その理由に①一部の都市部を除き人口減が進み、入院患者が減った、②医療の進歩で、入院が必要だった治療が外来に移行した、③コロナ禍を経て在宅医療が充実してきた点などが挙げられます。
一方で、日本の病院は戦後の人口増と経済成長の時期に急増し、現在も人口当たりの病院数や病床数は諸外国に比べて極めて多く、7割が200床未満の中小規模です。それが医療人材を広く薄く分散させ、過重労働を招き、医療事故のリスクを高めています。今の赤字は、入院需要の減少など医療ニーズの変化に、病院が対応できていないことも要因の一つです。

(2025年11月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)





