医師の地域枠

 地域枠は、地域での医師数の偏りを解消するためにできた制度です。2004年から医学部を卒業した研修医が自由に研修先を選べるようになりました。若手医師は、生活の利便性や専門的な技術の習得などを求め、都市部に集まりがちです。

 地域枠は、卒業後に9年以上、枠をつくった都道府県内に残り診療することが入学の条件となっています。医師不足の都道府県は、地元の大学に地域枠をつくれば、卒業した医師を地元につなぎとめることができます。定員に占める割合は、受験者を地元出身者に限る入試枠などもあわせると、2024年度に19.5%になっています。

 厚生労働省によれば、35歳未満の勤務医数を2012年と2022年で比べると、医師多数県では4.6%増にとどまっていますが、医師少数県では27.8%増でした。また、2021~2023年に医学部卒業後に地元に残って臨床研修を受けた割合は、一般枠の県外出身者が4割弱だったのに対し、地域枠の医師は9割弱でした。各都道府県では、医師を地元に定着させるため、希望するキャリアをかなえられるよう診療科や就業先の選択肢を増やしたり、出産・育児や大学院進学、海外留学時は義務の一時中断を認めたりするなどしています。

 厚生労働省は、地域枠は若手を中心に一定の効果を発揮しているとしています。人権配慮の観点から2020年に離脱事由の具体例として、家族の介護、体調不良、結婚など10項目を挙げ、さらに2022年に都道府県や大学は離脱要件をつくり、受験生と保護者から志願時に書面で同意を得ることをルール化しています。入学後の認識の行き違いを無くすためです。

(2025年11月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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