当番弁護士制度の登録割合が低下しています。登録割合が高い地方の弁護士会でも、会員の高齢化が進み危機感が増しています。当番弁護士制度とは、逮捕直後の容疑者から依頼を受けた弁護士が留置場などに駆け付けて接見し、1度だけ無料で相談に応じる制度です。各弁護士会が費用を負担し、登録している弁護士の中から毎日の割り当てを決めています。
依頼は容疑者本人のほか、家族や友人からも可能です。所管の弁護士会が電話で受け付けます。接見した容疑者が希望した場合、引き続き私選や国選の弁護人を務めることができます。当番を受けたらそのまま国選弁護人になることが多く、起訴されれば判決までは早くても数カ月かかります。報酬は国選と合わせても10万~20万円程度で、負担に見合わなくやっていられないという思いが強くなってきています。
かつては起訴されるまで国選弁護人が付けられず、法的助言を受けられないまま、多くの容疑者が意に沿わない供述調書を取られていました。こうした状況を打破しようと、英国を参考に大分や奈良、福岡の弁護士会が1990年に制度を導入しました。司法の救急車という位置付けでしたが、刑事事件に詳しくなくても、全員が担うものだという使命感がありました。裁判員制度などが始まって刑事弁護の専門化が進みました。当番もそうした刑事のプロに任せれば良いという考えが広まってきています。

(2025年12月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





