経済産業省の調査によれば、大学発スタートアップの新陳代謝が乏しいとされています。総数は10年で3倍に増え、5,000社に達しています。存続率は9割を超えています。米国は知的財産の有無などで区分けし、2割台で推移しています。成長力のある企業がどれだけあるのか、日本も実態把握が求められています。
日本の大学発スタートアップによる新規上場は、2020~2023年に6件、2024年は0件です。未上場のまま稼ぐ例も少なく、売上高1,000万円未満の企業が半数を占めています。営業損益は半数が赤字で、0円をあわせると6割に迫っています。黒字企業でも1億円以上は2%にとどまっています。ビジネスとして上手くいく可能性を見いだせる経営者が不足していることが背景にあります。学生や研究者がCEOを務めるケースが7割弱に及んでいます。企業の経営層を経験した人が就くケースは2割以下です。
大学発スタートアップの表向きの数だけみれば、日本は約5,000社、米国は7,000社と差は縮まっています。新陳代謝を通じて成長企業が生まれるダイナミズムはまだ米国に一日の長があります。米国は積極的にリスクをとるため、上手くいかないケースも多いのですが、大きく伸びる企業も出てきています。日本は大きなリスクをとることに慎重で、潰れない代わりに大化けもしにくく、中小零細のまま存続したり休眠状態になったりするケースが多くなっています。

(2025年12月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





