生殖補助医療で生まれた子ども―Ⅱ

生殖医療技術が出生児の平均体重にどのように影響するかを2007、2008年度の日本産科婦人科学会のART登録より正期産(妊娠37週から41週)の出生児体重を抽出し、日本の全正期産出生児と比較することで検討した。

凍結融解胚移植による正期産児14,555人の平均体重3100.6gは新鮮胚移植による正期産児12,627人の平均体重3009.5gと比較し有意に大きかった(p<0.00001)。日本全体の正期産児1,842,598人、平均体重3059.6gとの比較でも凍結融解胚移植で有意に大きく(p<0.00001)、一方新鮮胚移植では有意に小さい結果であった(p<0.00001)。これらは分娩週数ごとの比較でもすべての週で同様の結果であり、正期産で2500g未満の出生体重児の割合も凍結融解胚移植で5.00%、日本全体で5.55%、新鮮胚移植で7.62%と有意に凍結融解胚移植周期で少なかった。

また移植胚の発育段階による比較では新鮮胚凍結胚ともに初期胚よりも胚盤胞で有意に大きく(新鮮胚p<0.00196、凍結胚p<0.00001)同じ発育段階でも凍結融解胚での出生児が有意に大きかった(初期胚p<0.00001、凍結胚p<0.00001)。つまり初期胚よりも胚盤胞、新鮮胚より凍結胚で生まれた子どもが有意に出生時体重が重くなることが判明した。このことから培養・凍結融解技術に関わる因子は、児の出生体重に何らかの影響を与える可能性があると考えられた。ART出生児ではゲノムインプリンティング異常を引き起こす可能性が一般出生児に比して6~10倍高いと報告されている。この体重増加が、現在注目されているインプリンティング異常と関係しているかどうかは今後の重要な検討課題である。

生殖補助医療で生まれた子どもーⅡ 

(吉村やすのり)

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