英オックスフォード大のアワー・ワールド・イン・データの推計によれば、1万2,000年前の世界人口はわずか500万人でした。西暦0年時点では2億3,000万人、1800年には10億人、1960年には30億人、現在は80億人です。国連が2100年の世界人口を102億人と予想しています。人口増加はしばらく続きますが、近年多くの国で出生率が人口置換水準に満たなくなっています。世界の主要地域における例外は南アジアとアフリカだけです。
一般的に、その地域や人々の経済力が高いほど出生率は低率です。また、大卒女性は高卒までの女性に比べて産む子どもの数が少なく、経済的な繁栄こそが最も強力な避妊法となっています。さらに都市化、そして教育の大衆化も出生率の低下に影響を与えています。
英国の経済学者アデア・ターナー氏は、人口減少はそれほど脅威ではないと考えています。出生率の低下が国家存亡の危機と捉えられるのは、現役世代が高齢者と年少者をどれだけ支えているかを示す従属人口指数が急上昇するとい考え方にあります。高齢者が働き続けることにより、出生率が極端に低い場合を除き、従属人口指数の上昇はそこまで大きくならないと思われます。
AIによって加速すると期待される生産性の向上も解決策の一つです。2世紀前に比べて労働時間がはるかに短くなったのは、1800年頃に比べて生産性が飛躍的に高まっています。その結果、高所得国では、15歳以上が労働に費やす時間の割合が少なくとも60%減少しています。一方、1人あたりの生産量は15倍に拡大しています。従属人口指数が若干上昇しても十分に対処可能です。
人口が若ければ、豊富な労働力人口が経済成長をけん引する人口ボーナスを享受できるとの考え方は多いのですが、実際には出生率が持続的に高い国の経済成長が速くなるという証拠はありません。むしろ、持続的な出生率の高さは、所得の伸び悩みや大量失業といった人口統計上の大惨事をしばしば招くことがあります。また人口増にはコストが伴います。地球環境に負荷がかかるだけでなく、多くの国で都市部の土地や住居の価格高騰といった弊害が出てきます。出生率が1を割り込めばさすがに問題ですが、1.5前後を維持することにより、ワイズ・シュリンクで対応できるかもしれません。

(厚生労働省の従属人口指数の推移のグラフ)
(吉村 やすのり)





