マイiPS培養装置の開発

 パナソニックホールディングスは、患者自身の血液からつくるiPS細胞を全自動で培養できる装置を開発しています。他人由来に比べて拒絶反応を抑えることができます。患者一人ひとりの細胞から作るマイiPSは、1人あたりの培養費用が5,000万円程度かかっていました。新装置で50分の1の100万円以下を視野に入れています。

 培養作業の機械化で人件費が浮くだけでなく、衛生管理の効率が格段に上がります。手作業では培養する細胞が菌やウイルスに感染しないよう、部屋全体の衛生状態を厳格に管理しなければなりません。外部環境から閉ざされた装置ならばこの衛生管理にかかる費用を抑えられます。マイiPSの普及の課題だったコストを低減できます。

 現状、他人由来のiPS細胞を使うのが一般的です。事前に大量に培養してストックできるため、製造費用を安くできます。しかし他人由来の細胞を移植すると拒絶反応が起こりやすいリスクがあります。マイiPSは、HLAと呼ばれるたんぱく質の型が合うため拒絶反応はほぼ起こりませんが、オーダーメードのため培養費用が高いのが難点でした。今回の装置は、血液中の様々な細胞からiPSになりやすい特定の細胞を選び出す機能を搭載しています。

 日本はこれまでiPS細胞研究をリードしてきました。しかし、産業界では資金調達の壁を越えられず、基礎研究が実用化に到達しない死の谷に直面しています。治療に使う細胞の量産は人手が必要でコストがかさみます。こうした課題を乗り越えるためには、細胞の作製技術の進化が不可欠です。

(2026年4月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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