少子化対策として現金給付は有効か

 日本経済新聞社は、経済学者50人を対象に少子化対策について聞いています。子育て世帯への現金給付は、政策の優先順位で高くないとの回答が50%を占めています。政府は2024年度に所得制限を撤廃するなどして児童手当を拡充しています。2026年度の予算額は2.1兆円に上っています。子育て世帯への現金の支給は東京都など自治体でも広がっています。しかし、仕事と子育ての両立支援策の方が就業率も上がるので、費用対効果で優れていると思われます。

 調査では、出生率の低下トレンドの反転策があるかも聞いています。どちらとも言えないが38%で最多ですが、存在するとの見方も34%見られています。男女の賃金格差の縮小につながる政策は、女性も男性もキャリアと家事・育児を両立しやすくなり、出生率を上昇させる可能性があります。日本では、婚姻率の低下が出生数減少に大きく寄与しています。婚外子の権利が広く認められているなど欧州の経験も踏まえて、子育て支援から家族形成支援への発想の転換が必要です。

 人口の多い世代は、もはや子どもを産まない年齢となってしまっています。個人の自由な選択を尊重する社会で、トレンドを反転させる財政的に実現可能な対策は見当たりません。人口減を踏まえて行政や公共インフラなどを設計する賢い縮小を支持する声もみられています。少子化が続くことを前提に、社会保障や労働市場のあり方を考えていく方が現実的かもしれません。

 少子化が1人当たりの実質所得を押し下げるかについては、押し下げるが48%、どちらとも言えないが46%と拮抗しています。長期的には将来の労働力や人的資本の蓄積を弱め、イノベーションや社会保障の持続可能性を損なうかもしれません。少子化の進行を前提に、生産性向上や社会保障改革を実行できるかが鍵となります。人手不足を契機に省力化投資やDXが進み、生産性向上につながる可能性もあります。

(2026年6月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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